悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「じょ、ジョエル様。冗談にもほどがあります!」
慌てて言った私に、
「僕は冗談なんて言っていませんよ」
ジョエル様はにこにこ笑いながら返す。
そこで、はっと気付いた。ジョエル様はにこにこしているが、目は笑っていないのだ。まさか、本気で言っているのではないよね……
「このままだと、兄上は貴女を泣かせるのではないかと、僕は心配しています」
いや、もう十分泣かされたけど……
「大丈夫です。私は強いので」
笑顔で答えていた。
ジョエル様は、セリオにキツく当たるルーカスに釘を刺しているのだろうか。きっとそうだよね、と自分に言い聞かせる。いずれにせよ、私はルーカスともジョエル様とも結婚は出来ない。