悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「あ……ありがとうございます……」
苦し紛れに答えるのが精一杯だった。そして、気まずすぎてジョエル様と目を合わせられない私は、頬を染めて俯く。
こんな私は、ルーカスの刺すような視線を感じていた。ルーカス、絶対に私とジョエル様を不審に思っているだろう。
「……もういい」
ルーカスは低い声で吐き捨てて、私の手をぎゅっと握る。不意に手に触れられるものだから、私は思わずビクッと飛び上がってしまう。動揺する私にはお構いなしに、ルーカスは荒々しく告げた。
「俺はセシリアと席に戻る。くれぐれもセシリアには手を出すな!」
そしてそのまま、ルーカスはジョエル様が何気なく手に持っている小瓶を見つめた。