悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。




 館の中は、天井が高くてシャンデリアが煌々と煌めいていた。そして足早に歩くルーカスを見ると、館の人々は立ち止まって頭を下げる。ルーカスはこうやって人々から敬われるため、天狗になっているのだろう。


 ルーカスはそのまま吹き抜けを通り抜け、螺旋階段を上がる。長い足ですたすた歩くものだから、私はついていくのがやっとだ。そして、この速足でさえ私を陥れるためにやっていたのだろうか。

 焦る私はとうとう足を踏み外し、無様に階段で転んでしまった。びったーんという、豪快な音を立てながら。


 ルーカスは、そんな私を嘲笑うかのように見て、告げる。

「何をしている。コントなら、一人でやれ」


 こ……コント!?

 そんなつもりは全く無い。そして、転んだ人を気遣うことすらしないルーカスが、ますます嫌いになる。絶対に令嬢を当てがって、早々に逃げてやると何度も心の中で呟いた。


 私は痛む足を庇い、何とかルーカスの後を追う。そんな私を振り返りもせず、ルーカスは長い廊下に並ぶ一つの扉を開けた。そして、私を招き入れる様子もなく、部屋に入っていく。

 私も入っていいのだろうか。それとも、早速令嬢探しに出かけてもいいのだろうか。

 戸惑っている私を睨んで、ルーカスは声を荒げた。


「何をしている。はやく入れ」



 もう嫌だ、この男!!


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