悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
彼は惚れ薬を飲んでしまった
ルーカスは、私を来賓席の中央付近の席へと案内してくれた。
ルーカスが座るであろう席の隣には、彼の父親であるトラスター公爵夫妻が座っている。相変わらず厳しい顔のトラスター公爵はちらりと私を見る。そして私は、例外なく飛び上がりそうになった。だが、冷静に冷静にと心を落ち着ける。
トラスター公爵は、ルーカスと私の結婚に反対している。もちろん、賛成するはずがないことは分かっているが、やはり怖気付いてしまうのだ。
「父上。彼女がセシリア・ロレンソです」
ルーカスが紹介してくれるが、トラスター公爵は
「あぁ」
と頷いただけで、それ以上こちらを見なかった。
私と話さえしたくないのだろう。それくらい分かっていることだが、あからさまに拒絶されると胸が痛むのだった。
ルーカスと結婚するということは、今後もこの対応に耐えなければいけない。ルーカスは私を愛してくれるが、誰からも祝福されない辛い結婚生活になるだろう。正直、私は周りを敵に回してまで結婚を強行する勇気はない。