悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
気分が沈むなか、とうとう花祭りのパレードが始まった。壮大な行進曲が響き渡り、華やかな衣装の人々が前を通り過ぎていく。
花びらを撒き散らしながら軽快なステップを踏む踊り子に、花で飾られた馬に跨る騎士たち。
騎士集団には、お兄様の姿もあった。正装用の騎士服を身にまとい、凛とした表情で前を見つめている。公爵家の騎士たちは、この近辺ではアイドル的な扱いなのだろうか。女性たちの黄色い歓声が沸き起こっていた。
こんな華やかな雰囲気のなか、ルーカスは来賓に挨拶回りをしている。自分の企画した祭りを楽しむこともせず、立派に仕事をこなす姿にまたときめいてしまった。
だが、ちくりとした。もし私が誇れる婚約者だったら、ルーカスは挨拶回りに私を同行させただろう。この来賓席に一人でいるということは、ルーカスだって私を紹介するのに気が引けているのだろう。
当然のことなのに、胸がずきんと痛む。そして、私は祭りに集中しようと必死に前を見るのだった。