悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
護衛は背筋を伸ばし、私に掴みかかろうとした。こうやって、ゴミみたいに会場から投げ出されなくても、私は自ら出ていくのに。だって、私にはもう、ここにいる理由がないのだから。
身分相応な上に、ルーカスの気持ちだってなくなってしまった。こうなる前に、潔く身を引くべきだった。それに、公爵邸に乗り込むなんて、しなければ良かった。ルーカスを好きになってしまったから、ルーカスと離れるのが辛い。あの傲慢な態度や、生意気な口調でさえ愛しいほどに……
「おい、何をしている!」
不意に、大好きなその声が聞こえた。
その声を聞くと、まだ胸がきゅーっとする。諦めなければならないのに、縋りそうになってしまう。彼はもう、私になんて興味もないだろうに。
護衛たちに両腕を掴まれ、ずるずると引きずられている私の近くで、
「ルーカス様」
マリアナ様が嬉しそうに彼の名を呼ぶ。そして彼女は、ピンク色のドレスを翻し、彼の元へと駆け出したのだ。