悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「ルーカス様、お待たせしてごめんなさい。

 セシリアさんから、ルーカス様がなぜセシリアさんに惚れていたのかを聞き出したのですわ」

 ……え!?

 予想外の言葉に、私はルーカスに駆け寄るマリアナ様の背中を見た。

「セシリアさんは、公爵夫人の座が欲しくて、ルーカス様に惚れ薬を飲ませていたようですわ。

 でも、薬の効果が切れ、ルーカス様もようやく正気に戻られたのでしょう? 」


 マリアナ様は、何を言っているのだろうか。私がルーカスに惚れ薬なんて飲ませるはずがないのに。私は、そんなマリアナ様みたいなことはしていない。


「……そうか」

 ルーカスは低く呟いた。どんな顔をしているのか見たいのだが、陰になっていて表情は見えない。

 そんなルーカスに、マリアナ様は飛びついていた。まるで主人の帰りを待つ子犬のように、すごくすごく嬉しそうに。

「おかえりなさいませ、ルーカス様」


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