悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「ルーカス様。これからはわたくしが、貴方のお側にいますわ」
マリアナ様の甘い声に、
「どけよ」
ルーカスの氷のように冷たい声が被った。
それがいつも通りのルーカスすぎて、はっと我に返る。
「どけっつってんだよ、クソ女が!! 」
ルーカスはいつも以上に荒ぶって、マリアナ様を突き飛ばした。慌てふためくマリアナ様はよろめいて、弱々しく地面に尻もちをついている。
そんなマリアナ様を気にかける様子もなく、ルーカスは私のほうを……私の体を無理矢理引き摺る二人の護衛を睨んだ。その瞳には、怒りが見え隠れしている。
「てめぇら、何してるんだ!? 」
「は、はっ!! 」
護衛たちは慌てふためくが、私を離してくれるそぶりはない。その代わりに、言いにくそうにルーカスに告げる。
「で、ですが、ルーカス様……この女性は、ルーカス様に惚れ薬を盛ったと聞きましたが……」