悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「はァ!? 」

 ルーカスは怒りに顔を歪ませ、溢れる殺気とともに、ずかずかとこっちへ歩いてくる。そして、ぐっと護衛の胸ぐらを掴み上げた。

「惚れ薬? そんなもの、セシリアが俺に飲ませる必要などないだろう」

 そして、彼は付け足す。

「惚れ薬を俺に飲ませたのは、セシリアではなくその女だ」

 ルーカスは弱々しく地面に座り込むマリアナ様を、相変わらず怒りでいっぱいの瞳で睨む。



 マリアナ様がルーカスに惚れ薬を飲ませたのは分かっている。それで、ルーカスはマリアナ様にベタ惚れになると思っていた。だが、目の前のルーカスは至って普通で、マリアナ様に惚れている様子は微塵もない。一体、どうしてしまったのだろうか。


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