悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
私が聞く間もなく、ルーカスは怒りのこもった声で続ける。
「俺はこの女が惚れ薬を持っていることを知っていた。
だからあらかじめ、解毒薬を用意していた」
……え!? 解毒薬!?
ルーカスが青色の小瓶を取り出すと、項垂れていたマリアナ様がさらに項垂れた。そんなマリアナ様が哀れにも思ったが、ホッとした気持ちでいっぱいになる。
ルーカスがマリアナ様に惚れなくて、本当に良かった。本当に嬉しいのだが……
状況は、何も解決していない。ルーカスが私と結婚すると、私たちに待っているものは茨の道なのだ。
「仕事は済ませた。それに、今後この女の顔を見るのも苦痛だ」
ルーカスは私を掴んでいる護衛の手を払いのける。護衛たちは、罰が悪そうに身を引いた。
「俺のセシリアに指一本触れるな。セシリアに触れてもいいのは俺だけだ!」
何その独占欲。だけど、その言葉すら嬉しいと思ってしまう私は、どうかしている。