悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

 セシリア特製のブレンドティーと、お洒落なクッキーを持って部屋に戻る。すると、部屋の中には相変わらずだらけた様子で椅子に座るルーカスと、ルーカスの前に立っている人物がいた。

 ルーカスの前に立っている人物は背が高く、ブロンドの髪に所々白髪が混じっている。そして、ルーカスによく似ているが、もっと知的でもっと厳しい顔をしている。黒いスーツを着ており、見るからに高貴だ。

 この人はまさか……

「ルーカス。花祭りに関しては、お前に一任している」

 男性の低い声が聞こえる。

「将来、私の爵位を継ぐ者として、必ず成功に導くように」

「ハイハイ、承知しました」

 ルーカスは相変わらず面倒そうに答えるが、この会話から私は確信した。

 この高貴な男性はルーカスの父トラスター公爵で、ルーカスは将来公爵になるのだ。ルーカスが公爵なんかになったら、トラスター公爵家も終わりだな、なんて心の中でほくそ笑む。

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