悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
その言葉で十分だ。
ルーカスが私を陥れようとしているはずはないし、プライドが山のように高いルーカスが謝っているのだ。ルーカスは心から私を心配してくれている。それははっきりと分かった。
むしろ、私こそ謝りたい。
私がもっと誇れる令嬢だったら、今日みたいなことにはならなかっただろう。そして、何も考えずに結婚し、幸せになれたに違いない。だが、そんなことをルーカスに言えるはずもない。
「ありがとう。ルーカスが謝らなくてもいいわ」
なんて、ひねくれた返事しか返すことが出来なかった。
ここでルーカスに縋ってしまうと離れられなくなる。この花祭りでもよく分かった。私はいかに歓迎されておらず、いかにルーカスに相応しくない女性だということが。ルーカスのためにも、私はこれ以上ルーカスに好意を持たれてはいけない……と思うのに……
「俺にはセシリアしかいないから。……分かれよ」
泣きそうな声でルーカスが言う。普段のルーカスからは考えられないほど、悲しげな消えてしまいそうな声だ。