悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「セシリア……」

 ルーカスは震える声で私の名を呼び、そっと親指で唇を撫でる。私の体を電流が走り、一気に鼓動が速くなる。

「好きだ、セシリア……」

 いつものルーカスとは違う、切なげな瞳で見つめられる。

「でも、ルーカス……私たちはこれ以上……」

 近付いてはいけない。そう吐こうとした唇を、柔らかいルーカスの唇で塞がれる。


 抵抗しようとするが、ルーカスに抱きしめられると力が抜けてしまう。そして、ふにゃふにゃになった私の唇の間から、強引に舌が挿入される。

 もうこれ以上は駄目なのに、ルーカスの目的だって分かっているのに、彼を求めてしまう私がいた。頭では釣り合わないことは分かっているのに、もっと触れて欲しいと思ってしまう。




 長い長いキスのあと、吐息混じりにルーカスは聞く。

「俺のこと、嫌いなのか? 」

「そんなことはないわ。……でも……」

「それならいいだろう」

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