悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

 ルーカスは熱い瞳で私を見た。そしてそのまま、また唇を重ねる。

 ルーカスがキスをするたび、体が熱く甘く反応する。これ以上はまってはいけないと分かっているが、どんどん深みに堕ちていく。長い長いキスの後、微かに残っている理性を保ち、ルーカスに告げた。

「私と結婚しても、あなたは幸せになれないわ。だって私は……」

「セシリア」

 甘く優しい声で名前を呼ばれる。そして、相変わらず熱っぽい瞳と視線が絡まる。

「大丈夫だ」

 ルーカスは静かに告げた。

 何が大丈夫なのかは甚だ謎だ。だが、不覚にもルーカスの言葉を信じてしまいそうになる。

「俺を信じろ」

 ルーカスなんて信じられるはずがないのに……普段の傲慢でふざけた姿を見ていると、出まかせを言っているに違いないと思ってしまうのに……



 ルーカスはまた唇を塞いだ。そして甘くて情熱的なキスが降り注ぐ。

 こうやってルーカスにキスをされると、頭が真っ白になってしまう。深入りしてはいけないと分かっているのに、制御が効かなくなってしまう。

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