悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
私はいつの間にかルーカスの仕事部屋まで辿り着いており、いつものように軽くノックをする。ルーカスは不機嫌そうに返事をするのだが……今日は音沙汰がない。一体、どうしてしまったのだろう。私は遠慮がちに部屋の扉を開け、そして固まっていた。
ルーカスは、いつも通りデスクに座っていた。デスクの上には、積み上げられた資料の山が出来ている。その中央で、ルーカスは手を組み項垂れていた。
「お、おはようございます」
あいさつをしながらも、胸はドキドキ早鐘を打つ。だが、ルーカスのただならぬ様子を見て、甘い気持ちになれないのも事実だった。
「ど、どうされました? 」
遠慮がちに聞くと、ルーカスは泣きそうな顔で私を見た。そして、口元を歪めてすがるように言う。
「クソチビ……」
ルーカスのくせに、そんな顔をして欲しくない。色々と思い出してしまうから。だが、ルーカスはそのまま弱々しく告げたのだ。
「セシリアに嫌われた」
「えっ!? 」