悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
《ルーカスside》



 セシリアが好きだ。そしてセシリアも少なからず俺を好きだと思っていたのだが……どうして嫌われてしまったのだろう。

 ベッドはもぬけの殻だったが、俺の体にはいまだにセシリアの感触が残っている。柔らかくていい香りがして、心臓が止まりそうになりながら彼女を抱いた……




 俺はふらふらっとクソチビの出ていった扉に歩み寄り、扉を開けた。なにも、クソチビを引き止めようとしたわけではない。ただ、体が勝手に動いたのだ。

 心ここに在らずの俺の耳に、マルコスの声が聞こえてきた。

「父上と母上が、森の外れのあの家から追放されることになったらしい」

「えっ!? なんで!? 」

 クソチビの声が聞こえる。

 マルコスとクソチビは友人だと言うが、マルコスはなぜ自分の身の上話をクソチビにするのだろうか。そして、マルコスの父母が追放されるということは……セシリア一家が追放されるということか。一体なぜだ?

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