悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
セシリアは……なに馬鹿なことを言っているのだろう。俺のことなんて考えなくてもいいのに。俺は突き進むのがどんな道であれ、セシリアと共に歩みたい。俺にとっての地獄は、セシリアがいなくなることだ。
セシリアが学院を去ってから、彼女のことを考えない日はなかった。楽しかった学院生活も、セシリアがいなくなると途端につまらなくなった。自分をかっこよく見せようとか、セシリアをちょっとからかってやろうとか、そういう日々の楽しみが奪われた。
だから俺は何年もかけて、どうすればセシリアと幸せになれるのか必死に考えた。そしてようやく胸を張ってセシリアを迎えられると思ったのに……また、俺の前から消えるのだろうか。
……いや、消えさせなんてしない。
俺は、クソチビをセシリアだとは知らず、酷い扱いを繰り返してきた。過去の俺をぶん殴ってやりたい気持ちでいっぱいだ。セシリアには最低な俺を見せつけてきたのに……セシリアは、俺のことを好きでいてくれた。
最低な俺の、どこを好きになってくれたのだろうか、それは甚だ謎だ。だが、ありのままの俺を好きになってくれたセシリアを、絶対に悲しませたくはない。