悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
マルコスと話を終えたセシリアが、部屋の中へと戻ってくる。俺は平静を装うが、心臓は止まってしまいそうだ。
「ルーカス様」
彼女はわざと低めの声で俺を呼ぶ。だが、どう考えてもセシリアの声だ。もっと言えば、クソチビだってセシリアそのものだ。気付かなかった俺は、最低な男だ。
「急遽用事が出来て、また家に帰らせていただきたいのですが……」
セシリアと目を合わせることが出来なかった。だが、出来る限り普通に答えた。
「分かった。急いで帰れ」