悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
私はこの人を知っている。お父様の代わりに伯爵になった、マリアナ様の父親だ。彼は冷たい笑みを浮かべたまま、私に問いかける。
「貴女の家がどうしてこうなったのか、分かるか? 」
「いえ……」
そう答えた私に、彼はにこりともせずに告げた。
「貴女が、私の娘マリアナの婚約者であるルーカス様に、手を出したからだ」
……え!?
「マリアナはルーカス様と結婚する。
マリアナとルーカス様が幸せに暮らすためには、貴女が近くにいては困るのだよ」
私のせいなんだ。私がルーカスと恋愛関係になったから……だから、自分の家族まで不幸にすることになってしまった。
浮かれていた私が愚かだった。やはり、ルーカスと私は結ばれてはいけないのだ。