悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。




「私がルーカス様を諦めれば、この家に住み続けてもいいでしょうか」

 私は震える声で伯爵に告げる。そして伯爵は、勝ち誇った顔で私を見下ろし、口を開きかけた時だった。



「貴方は、私を陥れただけでなく、セシリアの幸せまでも奪うのですか? 」

 不意に後ろから、聞き慣れた声がした。いつもは力無く弱々しい声なのに、今日は凛として力強い。おまけに、怒りすら感じる。

 振り返ると、私の後ろにお父様が立っていた。温厚なお父様が拳を握り、顔を真っ赤にして伯爵を睨みつけている。こんなにも怒ったお父様を見るのは初めてで、正直戸惑いを隠せない。

 だが、伯爵は余裕だ。馬鹿にするようにお父様を見て口を開く。

「陥れた? 勝手に自滅しただけだろう」

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