悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「どうやらこれは、ロレンソ元伯爵を陥れた犯人が、犯行の時間と方法を指示した走り書きです。
破られて処分されていましたが、術師に頼んで復元魔法をかけてもらいました」
ルーカスは低い声で告げた後、一枚目の紙に目を落とし、そこに書いてある文字を声に出して読んだ。
「ロレンソ伯爵が西門を通過後、庭に例の油を撒き火をつけろ。つけたあとはすぐに撤退を」
私は驚いてブロワ伯爵を見た。私だけでなく、お兄様もお父様も。そしてブロワ伯爵は恨むような瞳でルーカスを睨みつけている。
だが、ルーカスがその瞳に怯むはずもない。もう一枚の紙をお父様に差し出しながら、落ち着いた声で告げた。
「さらにこれは、犯人が伯爵領の油を購入した時の領収書です。
ここにブロワ伯爵の字でサインがされています」
「だが、これは私の名前ではないでしょう!! 」
ブロワ伯爵は顔を歪め、震える声で叫んでいた。