悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「だが!それが私の字だという証拠もないでしょう!
おまけに、受領人のサインは、私の名前ではない!! 」
ブロワ伯爵は真っ赤な顔で、震えながら叫んだ。
冷静なルーカスと、我を忘れそうなほど興奮しているブロワ伯爵。ブロワ伯爵がここまで慌てるということは、直接でないにしろ、何か関わっているのは確かだろう。
ルーカスは相変わらず静かに告げた。いつもの暴君のルーカスとは違い、落ち着いていて紳士的で、それでいて恐ろしかった。
「そう言われると思っていました。
だから俺は、三人の筆跡鑑定士に、この手紙の筆跡鑑定を依頼しました」
ブロワ伯爵はじりじりと後退りする。真っ赤に染まっていた顔は、今は血の気がなくなり青ざめている。
「あなたの作成した公的文書の字をお借りしました。その字と、この走り書きと領収書のサインを、筆跡鑑定に出しました。
結果、これらの字は百パーセントあなたのものだということです、ブログ伯爵。
なお、この筆跡鑑定には特殊な魔法が使われており、どう足掻いても結果は覆せません」
ルーカスが低い声で告げると、ブロワ伯爵はがくっと地に膝をついて倒れた。そして項垂れながら、弱々しく吐き出す。
「も……申し訳ございません……」