悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 そして、今はもう何のためらいもない。
 私はルーカスが好きだ。ルーカスが全てを解決してくれた今、私の気持ちは一つだ。


 ルーカスと結婚したい!




 私は溢れる涙を必死で我慢し笑顔で頷くと、私の笑顔に負けないような笑みを浮かべるルーカス。その形のいい瞳が細くなり、頬が緩まる。

 かっこいいルーカスの笑顔は眩しくて胸がドキドキするが、私はこれからもこのルーカスの笑顔を見続けなければならない。だが、きっと一生慣れないだろう。今だって、ルーカスの笑顔を見るだけで、胸がドキドキして熱くなって、頬がにやけてしまうから。


「セシリア、おいで」

 差し出されたその腕に、子犬のように飛び込んでいた。
 ルーカスにぎゅーっと優しく抱きしめられ、幸せだと思った。ルーカスとこれからもずっと一緒にいられるなんて……

「俺はお前と、これからのことについてゆっくり話をしたい。

 ……もう一度俺の家に来てくれるか? 」

 ルーカスの家と聞いた瞬間に、昨夜の記憶が蘇る。ルーカスの部屋で、私はルーカスに愛された。今こうやって普通に話しているのが信じられないほど、甘くて熱くて切ない時間だった。

 思い出して真っ赤になる私に、ルーカスは少し頬を染めて告げた。

「……嫌なら何もしない。ただ、話がしたいんだ」

 嫌じゃない。なんて言葉をぐっと飲み込んだのは言うまでもない。
 

< 243 / 267 >

この作品をシェア

pagetop