悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
色々考えているうちに、ルーカスの部屋の前に辿り着く。彼の仕事部屋ではなく、彼の寝室だ。
その扉が開かれた瞬間、いい香りがして頭がくらっとする。そして見覚えのある大きなベッドを見ると、そのことを思い出して体が疼いた。
だが、ルーカスはベッドではなく、ソファーに腰を下ろす。そんなルーカスを見ながら、いつもの癖で考えてしまった。
『彼が休憩する時は、お茶の準備をしなきゃ』
マッシュを床に下ろし、
「お茶を淹れるね」
なんて言ってしまった私を見て、ルーカスは儚げな笑顔を浮かべる。
「あぁ、ブレンドティーにしてくれ。あれを飲むと、気分が落ち着く」
……え?
固まる私を見て、ルーカスは儚げな顔のまま頬を緩めた。
「……なんて。セシリアは気を遣わなくていいんだ」
そのままぎゅっと手を引かれ、ルーカスの大きな腕の中にすっぽりとおさまってしまった。ルーカスの体に包まれて、その体温や香りを感じて、胸が甘い音を立てて止まない。