悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「俺の妻になるんだ。……使用人ではない」
「あ、あのね……ルーカス!? 」
どぎまぎする私の頬に唇を付け、ルーカスは静かに告げた。
「お前は俺が酷い奴だと分かっていたのに、俺に愛想尽かさなかった。
俺のこと、好きになってくれた」
「ル、ルーカス!? 」
もはや、私の声は震えている。
知っていたんだ。ルーカス、気付いていたんだ。
それなのに、あの茶番を続けていたの!?
「これからはずっと大切にするから。
俺がお前の使用人みたいに、何でもしてやるから」
「ちょ、ちょっとそれは……」
「俺がしたいんだ」
ルーカスは真剣な瞳で私を見つめている。いつもの馬鹿にしたような顔でも、うつつを抜かしている顔でもない。新しいルーカスの顔に、くらくらしっぱなしだ。