悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
ルーカスは昔から暴力的で破茶滅茶だったため、今の彼を見てもたいして幻滅はしない。むしろ、あの頃と全然変わっていないと思うだけだ。
だが、私にはもちろん気持ちはないし、ルーカスが私を好き……? それも何かの間違いだろう。
だってルーカスと過ごした数年間、彼はそんなそぶり一つ見せなかったのだ。私はただのクラスメイトだった。
「おい」
ルーカスの低い威嚇するような声ではっと我に返った。
ルーカスは、ブレンドティーの入ったマグカップを手に持ったまま、私を睨んでいる。
「お前は楽しいか。人の痴話を聞いて」
その言葉に、
「い、いえ!! 」
ということしか出来ない。だが、気になりすぎて聞いてしまった。
「その女性のことが、好きなのですか? 」
私は今、セリオだ。そう思いながらもドキドキする。
ルーカスが怒らないかとか……私のことを好きと言ったらどうしようとか考えてしまって。そして、どうか間違いであって欲しいと祈るのだった。
だが、ルーカスはマグカップを持ったまま、私を睨んで挑むように告げたのだ。
「好きだ。……でも、お前には関係ない」
いや……めちゃくちゃ関係あるのですが……!!