悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「ロイ」

 ルーカスは、新しい使用人のロイさんを呼ぶ。まだまだ若そうなロイさんは、不安げにルーカスに近付いた。

「マルコスを、部屋に案内してやってくれ。

 長旅で疲れているだろうから、明日の結婚式に向けて休んでもらう。

 そして、ロイ。お前も今夜はゆっくり休め。まだ館に慣れていなくて、疲れているだろう」


 ロイさんはホッとした顔になり、深々と頭を下げた。

 セリオ()に対する態度と大違いだ。だが、そんなルーカスを見て嬉しくも思った。こうして、ルーカスは次期公爵として相応しい人間になっていくのだろう。仕事が出来るだけでなく、好かれる人になって欲しい。本当のルーカスは正義感が強くて優しいのだから、その魅力を他の人にも知ってもらいたい。

< 252 / 267 >

この作品をシェア

pagetop