悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


「ルーカス。ここの果物の売れ行きが落ちている件が気になるわ」

 私は特産品の売り上げを綴った紙を手渡す。ルーカスはそれを受け取りじっと見つめた。形のいい瞳にすらっとした鼻筋。不覚にもルーカスが美形だから、顔が赤くなり目を逸らしてしまう。

 ルーカスは、こんな私の挙動不審に敏感に気付く。そして、口角を上げながら聞いた。

「どうしたんだ?
  ……そんなにもジロジロ見られると、我慢出来なくなるだろ? 」

「えっ!? 」

 慌てて三歩くらい下がった私を、ルーカスはまだなお熱い視線で見つめている。

 ルーカスは何を考えているのだろう。前のように指南書(エロ本)こそ読まなくなったが、彼はほぼ毎晩求めてくる。そんなルーカスに狂わされているのは言うまでもない。

 ……でも。ここではないでしょう。

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