悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

 私は真っ赤な顔で、慌てて言う。

「この果物は、この売れ行きのままで大丈夫? 」

 するとルーカスは、再び資料に目を落とす。それで内心ホッとした。



 ルーカスの補佐をし始めてからというものの、ルーカスに四六時中ドキドキさせられっぱなしだ。

 もちろんルーカスは、セリオに対するあの酷い対応はしないし……いや、同一人物かというほど、甘く優しすぎるし……こうも対応が違うと、さすがに落ち着かない。むしろ、スパーンと叩いてくれたほうがやりやすい。


「セシリア、おいで」

 不意にルーカスが甘い声で私を呼び、

「キャラ違うでしょう!! 」

とうとう耐えきれなくなった私が、スパーンと叩きそうになった。

 ルーカスはチッとわざとらしく舌打ちをして、なおも書類に目を落としている。どうやら甘々モードを抜け出せたようでホッとしたが、やはりやりにくい。

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