悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
腕の中に倒れた私を、ルーカスはぎゅうぎゅうに抱きしめる。ルーカスの香りと体に包まれて、頭が真っ白になってしまいそうだ。
「茶なら俺が淹れる。
それに……新婚旅行、まだだったからな」
「えっ!? 」
「俺はセシリアとゆっくり領地を旅して、いろんな思い出を残していこうかと思う」
不覚にも、その言葉に涙が出そうになった。
ルーカスは、こんな時にも私のことを思い、大切にしてくれているのだ。両親からもお兄様からも愛されて育ってきたが、それ以外の人から大切にされたことなんてなかった。だが、ルーカスは誰よりも私を大切にしてくれる。
「ありがとう、嬉しい」
思わずこぼすと、優しい優しいキスをくれた。