悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 だが、私はすぐに現実に突き戻されることとなる。

 ルーカスはぼーっと彼を見ている私を冷めた瞳で見て告げたのだ。


「何をぼーっとしている。

 俺は花祭りの来賓に、招待状を書かないといけない。業者にも早くしろと催促しなければならない。

 早く便箋と封筒を持ってこい!」

「は、はい!! 」

 私は飛び上がって、机の横にある引き出しを開ける。すると、引き出しを開けた衝撃で、本棚からどさどさっと本が大量に崩れ落ちた。そしてそのうちのいくつかが、私の頭や体を強打する。

「いたたた……」

 思わず座り込んだ私の前には、崩れ落ちた本が山のように積み重なっている。

 初日から、やってしまった。そしてこんなドジな私に、ルーカスはブチ切れるのだろう。


 だが……よくよく見ると、本棚のいくつかには無造作に本が詰め込んであるだけで、飛び出た本が危なっかしく揺れている。ルーカスの机の上も、資料が山積みだ。こんな整理整頓されていない部屋だから、本の雪崩だって起きるのだろう。使用人がすぐに辞めてしまうから、部屋の掃除さえ出来ていないようだ。


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