悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
それから、私は必死に部屋を片付けた。
本は内容で分類し、さらに大きさごとに並べて本棚に入れる。それだけで、本が突き出たり倒れたりしていた本棚は見違えるほどすっきりした。
次に床掃除に取り掛かる。隅々までモップで汚れを拭き取ったあと、さらに雑巾がけまでしておく。萎びた花を取り替え、窓を開けて換気をする。
いつも家で家事をしていた私には、このくらい容易い仕事だった。そして当のルーカスは、私のやっていることなんて完全無視して、自らの仕事を進めるのだった。
ルーカスは、片付けは出来ない人らしい。だが、公爵家の仕事は出来るようだった。
時折訪ねてくる業者らしき人の対応をし、分厚い資料に筆を走らせる。来客があるたびに私はお茶とお菓子を用意し、来客に差し出した。
そんな私に、ルーカスは常に傲慢な態度を取り続ける。いや、私だけでなく、来客にも上から目線だ。
常に恵まれた環境にいる公爵令息だから、人に感謝することも出来ないのだろう。なんて嫌な男なんだ。私は心の中で吐き捨てた。