悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
むしろ、弟に惚れそうなんですが
来客が帰ると、ルーカスは綺麗に片付いた部屋の中を見回した。
私は綺麗になったと思うのに、ルーカスはぶっきらぼうに吐く。
「ここは俺の部屋だ。勝手にものを触るな」
「も、申し訳ございません」
頭を下げながら、やっぱりこの人無理だと思う。
私が汗を流して整理整頓したのに、この言い様だ。私がセシリアに戻った際には、ボロボロに貶してやろうかとさえ思った。
「だが、綺麗になった」
その言葉に、はっと顔を上げた。ルーカスはやはり意地悪な顔をしたまま、整理整頓された本棚を睨んでいる。
「お前のクソ不味い紅茶も、まあまあだった」
クソ不味いのか、まあまあなのか、はっきりしてよ!
「お前があのクソ不味い紅茶でも淹れてくれれば、セシリアだって喜ぶだろう」
その言葉に、背筋がゾゾーっとした。
悪いけど、私、それは出来ない。だって、私がセシリアなのだから。万が一、セシリアがこの館に来ることになったら、セリオは姿を眩まさないといけない。
「せ……セシリア様が、す、好きなのですね……」
初めて自分から言葉を発したが、その言葉は酷く震えていた。どうか、バレませんようにと必死に祈る。