悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
ルーカスは、表情を和らげて宙を見る。
先ほどまでの意地悪な表情とは違う。私の話をする時、ルーカスはこんなにも優しげで温かい顔になる。だが、私がきゅんとするはずもない。
「あぁ……俺はずっとセシリアを思っている。
早くセシリアに会いたい。そして、セシリアを花祭りに招待しようと思う」
ちょ……ちょっと待って。私の思考がついていかないのだが。
ルーカスは、花祭りにセシリアを招待したいと言っている。セシリアが花祭りに行くのならば、セリオは休みをいただかなければならない。
ルーカスはなぜ私をそんなに思っているのだろうか。身に覚えのない私は、ルーカスの勘違いとしか思えない。
「俺はセシリアと花の道を歩き、パレードを共に見物したい。そのため、必死になって花祭りの準備をしている」
ルーカスが花祭りの仕事に真面目に取り組んでいるのは、私を招待するからと言うのだろうか。何という不純な動機だろう。
耐えきれず、思わず聞いてしまった。
「ルーカス様は、なぜ……せ、セシリア様を好かれているのですか? 」