悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

 ルーカスは、表情を和らげて宙を見る。

 先ほどまでの意地悪な表情とは違う。私の話をする時、ルーカスはこんなにも優しげで温かい顔になる。だが、私がきゅんとするはずもない。

「あぁ……俺はずっとセシリアを思っている。

 早くセシリアに会いたい。そして、セシリアを花祭りに招待しようと思う」


 ちょ……ちょっと待って。私の思考がついていかないのだが。

 ルーカスは、花祭りにセシリア()を招待したいと言っている。セシリア()が花祭りに行くのならば、セリオ()は休みをいただかなければならない。

 ルーカスはなぜ私をそんなに思っているのだろうか。身に覚えのない私は、ルーカスの勘違いとしか思えない。

「俺はセシリアと花の道を歩き、パレードを共に見物したい。そのため、必死になって花祭りの準備をしている」

 ルーカスが花祭りの仕事に真面目に取り組んでいるのは、私を招待するからと言うのだろうか。何という不純な動機だろう。

 耐えきれず、思わず聞いてしまった。

「ルーカス様は、なぜ……せ、セシリア様を好かれているのですか? 」


< 32 / 260 >

この作品をシェア

pagetop