悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
ルーカスと同じブロンドの髪に碧眼の瞳。だが、ルーカスよりも優しげで少し下がった目尻の彼は、私に優しく告げる。
「君は新しい使用人? この館で迷ったの? 」
私はぐっと黙る。
たった今、ルーカスの股間を蹴って部屋を飛び出したなんて言うと、優しそうな彼すら怒るかもしれない。いや、私は不敬ものだと言って、捕えられるかもしれない。
黙っている私に、彼は優しい声で告げる。
「僕は、トラスター家の次男、ジョエル。
君は兄上の新しい使用人だよね? 」
ジョエル様はそう告げ、私の前に身を屈めて目線を合わせる。ルーカスと同じく彼も美男だが、ルーカスよりもずっとずっと優しそうだ。
ジョエル様に聞かれ、思わず頷いてしまった。そして、この優しそうな男性に聞かれると、思わず吐き出してしまった。
「私はルーカス様の使用人ですが、ルーカス様に手を挙げてしまいまして……」