悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
ジョエル様はルーカスと兄弟なのに、どうして兄弟間でこんなにも違うのだろう。ルーカスが酷いだけに、ジョエル様に惚れてしまいそうだ。ジョエル様なら婚約者を大切にするだろうし、使用人を酷く扱うことも無さそうだ。ルーカスがジョエル様だったら良かったのにと、心から思った。
「兄上も大好きなセシリア嬢と結婚して、早く落ち着けばいいのに」
いや、それは困る。ルーカスとセシリアが結婚だなんて、耐えられない。
そして、ふと思った。ジョエル様を説得したら、私との縁談はないものに出来るかもしれない。
「あの……その件なのですが……」
私は上目遣いでジョエル様を見る。
ジョエル様は、相変わらず優しい顔で私に微笑みかけている。それはまさしく天使の笑顔だ。そんなジョエル様に、私は告げていた。
「せ、セシリア嬢は、平民です。おそらく、ルーカス様と釣り合わないかと存じます。
他にも、もっと適した令嬢がいるでしょう」