悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「確かに皆はそう言う。
でも、兄上はセシリア嬢以外、考えられないみたいなんだ」
ジョエル様はあまり乗り気では無さそうだ。だが、周囲の人はこの縁談に反対しているようで、心底ホッとする。
「舞踏会なんて開いてみてはいかがですか? 」
私は思わず提案していた。舞踏会で、ダンスが上手くて煌びやかな令嬢を見つけてもらおう。そうすれば、私の仕事も終わりだ。
ジョエル様はしばらく考えていた。そして、そうだねと頷く。
「今までどんな令嬢にも靡かなかった兄上だ。舞踏会を開いたところで、いい相手が見つかるとも思えない。
ただ、僕もそろそろ相手を見つけなければならないからね」
ジョエル様の相手なら、私がなります!なんて言いたくなるほどだった。
だが、ジョエル様も公爵令息だ。身分不相応に決まっている。私は黙って裏方にでも徹しよう。