悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。



 ジョエル様は、私をルーカスの部屋まで連れて行ってくれた。

 部屋を開けると、ルーカスは何事もなかったようにデスクに座って仕事をしている。私がいようがいなかろうが、関係ないのだろう。そんなルーカスに、ジョエル様は厳しく言ってくれる。

「兄上。使用人にキツく当たるのは、やめていただけますか?

 使用人が頻繁に変わると、兄上の評判も落ちます」

 ルーカスは、ジョエル様を思いっきり睨む。その目つきは、使用人の私を見る瞳と同じ、獰猛な野獣のようだ。そして、あからさまにイラついたように話す。

「評判とか、関係ない。

 俺は俺の好きなようにやる」

 あぁ……これはダメだわ。

 ルーカスは自己中すぎて、周りを見たり空気を読むことなんて出来ないのだろう。ジョエル様を見習って欲しい。

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