悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
不覚にも、少しぐらついてしまった
ジョエル様が去ったあと、ルーカスは思いっきり大きなため息をついた。そしてまた、私を睨む。
「クソチビ……余計なことばかりしやがって!! 」
ルーカスは何に怒っているのだろうか。
私が股間を蹴り上げたことだろうか。それとも、ジョエル様に助けを求めたことだろうか。はたまた、舞踏会を開くことを提案したことだろうか。いずれにしても、ルーカスが気に入らないと思っていることは確かだ。
「そもそも、舞踏会ってなんだ?
どうして俺が、興味もない令嬢と踊らなければならないんだ」
ルーカスはため息混じりに告げる。だから私は、思わず言ってしまった。
「もしかしてルーカス様、破壊的にダンスがお下手なんですね」
そして、慌てて口を塞ぐ。
こんな私を、ルーカスは思いっきり睨んだ。そして、失言をした私についに暴力でも振るうのかと思ったが……
「は? 馬鹿かお前」
ルーカスはあきれたように吐き出す。
「俺は学院時代、ダンスでもトップの成績だった」
その言葉に、思わず吹き出してしまった。
なに?ダンスでトップの成績!?
ルーカスって踊れるの!?