悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
ルーカスは怒りのこもった目で私を見る。その目で見られただけで、刺し殺されてしまいそうだ。
そしてそのまま、強い語気で言う。
「セシリアの父親は、犯罪者ではない!」
……え!?
「周りが信じてやらないと、彼女はどうやって生きるんだ!? 」
私は俯いた。気を許すと泣いてしまいそうだ。
ルーカスは、自分がセシリアを振り向かせるのは難しいと言われたことよりも、セシリアを侮辱したことに腹を立てている。どうしてそんなに優しいことを言うのだろう。本当に、キャラに合わないことは言わないでいて欲しい。
「今後、セシリアのことを悪く言うのを、一切禁止する」
ルーカスはそう告げ、書類に目を落とす。そして、ぼそっと吐き出した。
「確かに、セシリアが俺を好きになるのは難しいかもしれない。俺は最低な男だから。
でも、惚れた女を守り通すくらいの覚悟はある。
俺が近くにいてやって、あいつを理不尽な攻撃から守ってやりたい」