悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
しんと静まり返った室内に、ルーカスの低い声が響く。その声にはいつものような狂気はなく、少しだけ甘さと切なさがあった。
相変わらず書類を見る彼の眼差しは、いつの間にか優しげに歪んでいる。
「セシリアと俺は、学院時代の同級生だ」
ルーカスは静かに告げる。
「セシリアは目立つタイプではなく、正直はじめは興味もなかった。
俺はもっと派手好きで、窓際で読書なんてしているセシリアに、惹かれるとは思ってもいなかった」
……でしょうね。
私とルーカスは、タイプが全然違う。ルーカスは昔からクラスの中心にいて、目立つような人だった。もちろん、目立つといっても悪目立ちだが。
「だが、席が隣になった俺は、まんまとセシリアに堕ちた」
ルーカスは、なおも優しげで甘い声で続ける。