悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 むしろ、ルーカスは苦手な部類だった。家柄はいいはずなのに、乱暴者で喧嘩ばかりして。時には女の子を泣かせたり、先生に暴言を吐いたり。私の最も苦手とする部類だったのだ。

 そして今も、それは変わりない。いや、非常識な暴君と知って、ますます関わりたくないと思ってしまう。


「クソチビよ、お前はどうしてそんな顔をしている? 」

 そう言われて、はっと我に返る。

 私はきっとすごく複雑で、それでいて笑いそうな顔をしていたのだろう。慌てていつも通りの表情に戻す。

「お前が思っているよりも、セシリアはずっといい女だ。

 セシリアの父親が爵位を剥奪され、急に彼女が学院からいなくなった時、俺はどん底に堕ちた。
 俺は日々彼女に癒され、彼女から元気をもらって生きていたのだ。

 ……そんなセシリアを侮辱する奴は、例え使用人でも許さない」

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