悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

 それはもちろん、ルーカスのためにいい女性を見つけるからだ。だが、そんなことをルーカスに言うと、まさしく火に油を注ぐ事態になってしまうだろう。

 私は努めて冷静に答えた。

「ジョエル様にも素敵な女性を、と思いまして……」

 すると、ルーカスは刺すような視線でじろじろ私を見る。あまりにもじろじろ見るものだから、もしかして正体がバレたのかと不安になる程だった。

 だが、決して正体がバレた訳ではないらしい。ルーカスは、不機嫌そうに私に聞く。

「お前は結婚するつもりはないのか? 」

「えっ!?

 ……ええ。だ、だって私はじゅ、十七歳ですし……」

 いや、正確には二十二歳だ。だが、そんなことは口が裂けても言えない。

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