悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
恋愛工作、開始します
とうとう舞踏会の日がやってきた。
昼過ぎから私は、掃除に会場準備にと働きっぱなしだ。他の使用人たちとモップでホールを掃除して、テーブルを拭き、清潔な白いクロスをかける。そしてグラスやら皿やらを運んで並べた。
他の使用人からは、ルーカス専属の使用人であることに対する同情の言葉をたくさんもらった。使用人たちは私を見て気の毒そうな顔をして、口々に言うのだ。
「セリオ、大丈夫? 」
「まだ十七歳なのに、ルーカス様のおもりをしなきゃいけないだなんて」
「溜め込みすぎないようにね」
使用人の間でもルーカスの悪評は高いのか。
だが、意外と私は平気だ。確かにルーカスに暴言を吐かれることは度々あるが、根っからの悪人ではないと思うこともある。例えば、私の淹れたブレンドティーを貶しながらも喜んでくれたり、部屋が片付いたら嬉しそうにしていたり。
今回の舞踏会の準備だって、貶しながらも頑張っていることを認めてはくれた。だからといって、ルーカスに惚れることはないのだが。