悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
そして……いつの間にか陽も傾き、舞踏会の時間が迫ってきた。私は招待客をホールに案内したり、食事や飲み物を運んだりと大忙しだ。
令嬢たちは公爵家に呼ばれたからだろうか、とても華やかで美しいドレスに身を包んでいる。私なんかよりもずっとずっと綺麗だ。そんな令嬢たちを、内心羨ましくも思ってしまうのだった。
だが私は平民だ。私は私の仕事をやり遂げなきゃ。
「ようこそいらっしゃいました」
私は深々と頭を下げて令嬢たちを迎え、
「どうぞ、あちらへ」
ルーカスのいるほうへ案内する。
令嬢たちはルーカスを見て一斉に目をハートにするものの、当のルーカスは興味がないらしい。来賓の男性と話し、令嬢に近寄ろうともしないのだ。
……あれじゃあ、駄目だ。もっと頑張らねば!