悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
一瞬、ホールが静まり返った。ルーカスが大きな声を出すから、令嬢たちも何事かとルーカスを見ている。令嬢たちの前でセシリアに惚れているだなんて言ってしまったら……非常にまずい。令嬢たちは諦めてしまうだろうし、セシリアが槍玉に上がってしまうかもしれない。
「そ、そんなこと言わずに!ルーカス様!! 」
私は必死だ。
必死でぐいぐいルーカスを令嬢たちのほうに押し続けている。それなのに、ルーカスは石になったように動かないのだ。
「……なあ、クソチビ。いい加減にしろよ」
ルーカスはあからさまにイラついた声で言う。
「お前、そんなに俺が結婚して欲しいのなら、とっととセシリアを連れてこい!! 」
もう!なんでそうなるの!?
そして、こんなところにセシリアが来るはずなんて、ないのだから。