悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
それから私は、ルーカスにくどくどと説教を喰らった。令嬢達の前で。
令嬢達はこんな性悪のルーカスに、正直引いているのだろう。いつの間にか一人また一人と令嬢は消え、代わりに令嬢たちに囲まれたジョエル様がいた。
人のいいジョエル様は令嬢たちに紳士的に接して、大人気のようだ。ジョエル様を見ていると、なんだかルーカスを恥ずかしくも思う。
ルーカスはアルコールも入っているのだろう、その説教は厄介なオヤジみたいになっている。
「なあ、クソチビ。
お前使用人のはずなのに、時々どこかの令嬢みたいな所作をするよな」
ルーカスはワイングラスを片手に持ちながら私に言う。そしてその言葉にドキッとする。
今の私はセリオだ。出来る限り男らしくしているし、庶民らしくしている。だが、十五年間で身についた貴族の振る舞いは、なかなか抜けないようだ。……本当にもう平民なのに。
「わっ、私は貴族様に憧れていまして……それで、貴族様のマネをしておりまして……」
苦しすぎる言い訳をする。だが、貴族様を持ち上げたため、ルーカスは上機嫌だ。