悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「お前みたいなクソチビが、貴族になれるはずがない」
「ですよね……」
苦笑いする私を前に、ルーカスはぐいっとワインを飲む。そして続ける。
「でも、貴族がいいってもんじゃないぞ。
どこかのクソチビに、興味のない女をけしかけられるし。自由気ままに過ごすと、後ろ指さされるし」
ルーカスは後ろ指を指されていることに気付いているのだ。そしてもしかすると、悩んでいるのかもしれない。
「俺はお前が羨ましい。
不器用なくせに我が強くておせっかいで。皆に好かれて、いつも楽しそうで……」
正直、ルーカスがそんなことを思っているとは思わなかった。ルーカスは孤高の帝王で、人の評価なんて気にしないと思っていたのだ。
「俺がお前だったら、セシリアは惚れるのだろうな」