悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。



 お兄様はしばらく考えるように下を向いていた。そして、急に思い立ったように言う。

「それなら、力技でいくか!」

「えっ!? 」

「俺たちで、女性たちをルーカス様のほうに押し付ければいい!」

「さっすが!! 」


 そうと決まったら私たちは早かった。私は皿を運ぶふりをして、令嬢をぎゅうぎゅうルーカスのほうに押していく。

「向こうに行ったほうがいいですよ!」

 なんて言って。

 か弱い令嬢たちはきゃあーっと悲鳴を上げながら、どんどんルーカスのほうに押されていく。


 お兄様もお兄様で、

「ご令嬢。あちらが空いていますよ。共に行きませんか? 」

そう優しく令嬢に声をかける。

 お兄様は顔も良く、騎士服を着ているため極上の男に見えてしまう。だから令嬢たちはふらふらとついていってしまうのだが……あれ、完全にお兄様目当てでついていっているよね!? ルーカス目当てではないよね!? と、不安になるのだった。

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