悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 そしていつの間にか、ルーカスのいる辺りは、令嬢たちでごった返していた。きゃあきゃあ声が聞こえるが、その中心にいるのは、なんとお兄様なのだ。

 ……駄目じゃん!!

 私が大きくため息をついた時だった。




「お前、何のつもりだ」

 地の底から湧き起こるような、恐ろしい声が聞こえた。思わずビクッと飛び上がってしまった私の前には、いかにも不機嫌そうなルーカスがいる。

 ルーカス、いつの間に!?

「も、申し訳ございません。ルーカス様に令嬢たちをと思いまして……」

 そう言って、えへと笑う。こんな私を、イラつきにイラついたルーカスは怒鳴り飛ばしたのだ。

「余計なことをしやがって!

 テメェ、足洗って出直せ!! 」

「は、はい!! 」

 私は返事をして、大慌てでシャワールームに飛び込む。そして、大きなため息をついていた。


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